文法 / 比較
クジラ構文とその他の紛らわしい比較表現
要点整理
クジラ構文:A is no more B than C is D
「A is no more B than C is (D)」という形の文は、「AがBでないのは、CがDでないのと同じだ」という意味を表します。この構文は、日本の学校英文法で「クジラ構文」と呼ばれることが多く、比較表現の中でも特に読み取り方が難しいものの1つです。
A spider is no more an insect than a crab is (an insect).(クモが昆虫でないのは、カニが昆虫でないのと同じだ。)
この文を分解して考えてみましょう。
- no more ~ than … は、もともと「…より~ということはまったくない」という、程度の差がゼロであることを表す比較級の表現です。
- than のあとの内容(a crab is an insect=カニが昆虫である)は、話し手も聞き手も「明らかに誤りだ」とわかっている事実として使われます。
- 「Aが(あの明らかに誤りである)Cと比べて、Bである程度がまったく変わらない」ということは、「Aも同じくらいBではない」ということを意味します。
つまり、than以下の内容が明らかな事実(この場合は「カニは昆虫ではない」)であることを利用して、A(スパイダー)についても同じことが言える、と強調する構文です。日本語に訳すときは、「AがBでないのは、CがDでないのと同じだ」「AもCと同様にBではない」という形にすると自然になります。
なお、比較対象を表す文が than is/does などで終わる場合、繰り返しになる部分(この例では an insect)は省略されるのがふつうです。
no less...than:反対にどちらも同じくらい「そうである」ことを表す
no more ~ than とは逆に、「no less ~ than」という形は、「AがBであるのは、ちょうどCがDであるのと同じだ」という意味を表します。この場合は、Aについてもthan以下の内容についても、両方とも「そうである」ことが強調されます。
A dolphin is no less intelligent than a chimpanzee is.(イルカはチンパンジーに劣らず知能が高い。)
この文は、「イルカが知能が高い程度は、チンパンジーが知能が高い程度と比べてまったく劣らない」ということを表しており、「イルカもチンパンジーも同じくらい知能が高い」という意味になります。no more ~ than が両方とも否定(どちらもではない)を強調するのに対して、no less ~ than は両方とも肯定(どちらもである)を強調する、という対比で覚えておきましょう。
not so much A as B:Aというより、むしろB
「not so much A as B」は、「Aというより、むしろB」という意味を表す、紛らわしい比較表現の1つです。A と B のどちらも当てはまりそうに見えますが、B の方がより適切な言い方だということを表します。
He is not so much a teacher as a friend to his students.(彼は生徒たちにとって、先生というより、むしろ友人だ。)
この文は、「彼が先生である度合いは、友人である度合いほど大きくはない」ということを表しており、結果として「先生というより友人という側面が強い」という意味になります。B rather than A(AというよりむしろB)とほぼ同じ意味だと考えるとわかりやすくなります。
much less / still less:まして~ない
否定文のあとに続けて、「まして(なおさら)~ない」という意味を付け加えるときは、much less または still less を使います。
I can't even boil an egg, much less cook a full dinner.(私は卵をゆでることさえできない。まして、フルコースの夕食を作ることなどできるはずがない。)
much less/still less のあとには、前半で述べたことよりもさらに難しい・程度が大きいことを続けます。前半が否定文であることが前提の表現なので、肯定文のあとには使えない点に注意しましょう。
比較対象のねじれに注意する
比較の文を作るときに特に注意したいのが、比較対象のねじれです。これは、比べている2つのものが、文法的・意味的につり合っていない誤りのことです。
誤:The population of this city is larger than that city.
この文では、「この都市の人口」と「あの都市(そのもの)」を比べてしまっており、比べる対象がつり合っていません。「人口」と比べるべきなのは、あくまで「あの都市の人口」でなければなりません。
正:The population of this city is larger than that of that city.(この都市の人口は、あの都市の人口よりも多い。)
that of that city の that は、population の繰り返しを避けるために使われている代名詞です。このように、比較対象が「~の…」という形になっているときは、繰り返しを避けつつ、比べる対象をきちんとそろえるために、that(単数名詞の代わり)や those(複数名詞の代わり)を使うのが正しい形です。
The customs of this country are quite different from those of Japan.(この国の習慣は、日本の習慣とはかなり異なっている。)
customs(習慣)は複数形の名詞なので、繰り返しを避けるときは that ではなく those を使う点にも注意しましょう。
例題
例題1(基本)
問題
次の英文を日本語に訳せ。
A bat is no more a bird than a mouse is.
解答・解説を見る
no more ~ than … の構文です。than 以下の a mouse is (a bird)(ネズミが鳥である)は、明らかに誤りである事実として使われています。したがって、「コウモリが鳥である程度は、ネズミが鳥である程度とまったく変わらない」→「コウモリもネズミと同様に鳥ではない」という意味になります。
答え:コウモリが鳥でないのは、ネズミが鳥でないのと同じだ。(コウモリは鳥ではない。)
例題2(標準)
問題
次の英文には誤りが1か所ある。誤りを指摘し、正しい形に直せ。
The salary of this job is higher than that job.
解答・解説を見る
比較対象のねじれの誤りです。「この仕事の給料(the salary of this job)」と「あの仕事(that job)そのもの」を比べてしまっており、つり合っていません。「給料」と比べるべきなのは、「あの仕事の給料」でなければなりません。salaryの繰り返しを避けるため、that of that job とします。
答え:誤りはthat job。正しくはthat of that job。(The salary of this job is higher than that of that job.)
例題3(応用)
問題
次の日本語に合うように、( )内の語を使って英文を完成させよ。
彼女は忙しくて昼食をとる時間さえない。まして、休暇を取ることなどできない。 She doesn't even have time for lunch, ( much / less / take ) a vacation.
解答・解説を見る
「まして~ない」という意味を、否定文のあとに続けて表すときは much less を使います。less のあとには動詞の原形を続けます。
答え:much less take(She doesn't even have time for lunch, much less take a vacation.)
確認問題
問題
次の日本語を英語に直せ。ただし、no more ~ thanの構文を使うこと。
ペンギンが哺乳類でないのは、サメが哺乳類でないのと同じだ。
答え
A penguin is no more a mammal than a shark is.